大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)4207号 判決

記録によると、被告人に対する起訴状記載の公訴事実並に、原判決の認定判示した罪となる事実は、それぞれ論旨摘録の通りであり、その間訴因、罰条の変更手続が採られていないこと、昭和二十四年十月頃から昭和二十五年二月下旬頃迄の間の需要者割当証明書百七十枚の横領教唆の点について、原判決中に無罪の言渡をしていないことも亦記録上明らかなところである。しこうして刑事訴訟法第二五六条(論旨に同法第二六五条とあるのは同法第二五六条の誤記と認める)第三一二条に依れば、所論のように、公訴事実は訴因を明示してこれを記載しなければならないし、訴因を明示するにはできる限り、日時、場所、及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをすることを要し、起訴状記載の訴因以外の訴因を適当とするときは、裁判所は訴因の変更を命じた上でなければ、起訴状の訴因以外の訴因に基いて有罪の認定をすることができないのであるが、元来訴因又は罰条の変更について一定の手続が要求されているのは、裁判所が勝手に訴因又は罰条を異にした事実を認定することによつて、被告人の防禦権の行使を徒労に終らしめることを防止するにあるから、かかる虞のない場合、例えば裁判所がその態様及び限度において訴因たる事実よりいわば縮少された事実を認定するについては、敢て訴因、罰条の変更手続を経る必要がないものと解するを相当とするのである。本件について、原判決の認定判示した罪となる事実と起訴状記載の公訴事実とを対比するに、原判決の認定事実は、起訴状記載の公訴事実とその犯罪の態様を同じくしているが、限度において縮少された事実であることが認められ、従つて記録に現われた審理の経過から見て被告人の防禦権の行使を徒労に終らしめた点が認められないのであるから、原審が所論のように訴因変更手続を経ないで、原判示事実を認定していても、所論のように訴訟手続上の違法はない。

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